税務調査とは別で税務署から「お尋ね」の手紙が来ることがあります。ほっておいて良いのでしょうか?記事にしてみました。ご参考まで。
どういう時に送られてくる?
大きなお金が動いた時と考えてもらえればOK。①不動産を売却したとき・取得したとき。②消費税申告があるなら還付金額が大きかったとき、など。他にも③多額の海外送金を行ったとき・相続があったとき、などなどです。実務上よく見掛けるのは①②でしょうか。
※私は相続税申告に係わることも多いので相続の「お尋ね」もよく見ますが相続税申告が必要となるのは亡くなった方のうち10%未満の富裕層です。海外送金も同じく富裕層のみ。
②の消費税還付が大きくなるケースも結局のところ不動産購入や大きな設備投資が絡んでいることが多く「大きな金額が動く時」に該当します。大きな金額が動けば課税所得への影響も大なので税務署としては確認したくなるのです。
※居住用建物の仕入税額控除については改正が入り受けられなくなりました(消費税還付が受けられない)。大家さんに対する消費税に係る「お尋ね」は今後減りそうです。
次ブロックでは①についてもう少し詳しく書こうかと思います。 ②③については別の機会にでも。
不動産売買の際の注意点
不動産を売却した際、儲けがあれば確定申告が必要です。ただ、土地神話が崩れ一部を除き1990年代前半の勢いはありません。ほとんどのケースで3000万円特別控除を利用すれば税金は掛からない。3000万円特別控除を利用しない場合(住宅ローン控除を利用する場合)であっても、儲けは対した金額にはならないはずです。
なので売却の際は無申告だけ注意してください。3000万円特別控除を利用し納付額がゼロになる場合であっても確定申告が必要です。申告しても内容に不備・不明点があれば「お尋ね」が来ることもありますが、無申告の場合はもっとその確率が上がります。
一方購入時です。親の援助を受けたり単独ローンではなく夫婦共有とする場合があります。購入時、税務署が何に注目しているのかと言うとズバリ贈与税の有無です。両親からの援助で基礎控除を超えた援助を受ければ贈与税が掛かりますし、夫婦共有の場合には登記簿上の共有割合がその負担額と一致していなければ夫婦間の贈与問題が生じます。
これらを確認するために「お尋ね」が来ます。贈与税申告するから大丈夫ですよね?という方はその対応でOKです。こちらも内容に不備・不明点があれば「お尋ね」が来ることもありますが、無申告の場合は上述と同様です。
※ちなみに税務署は不動産登記情報を入手しています。無申告でもバレなくない?は非常に危険です。
ほっておいたら?
上のブロックを見て頂ければ分かる通り、税務署は課税所得への影響が大きくなる変動に関心を持っています。もっと直接的に言うならば、あなたがごまかしていないかに注目してます。だからお尋ねという形で客観的な資料を基に内容確認を取りたいのです。
もちろん税務署は「あなたを疑っています」とは言いません。でも、税務署が確認したいことがある≒疑ってます、ですよね?疑ってないなら「お尋ね」なんて出さないでくれという話なので、笑。
「お尋ね」は行政指導であり回答は任意です。ほっておいても罰せられることはありません。でも税務職員の立場になってみてください。無回答(無視)は疑念を抱かせることになります。この疑念が大きくなると…税務調査に発展します。税務調査における質問・検査には強制力があり黙秘や虚偽回答に対しては罰則が科されます。
ほったらかしてたら、やがて税務署が諦めてくれたという事例があるならチャレンジする価値はありますが、それは考えづらいです。やはり、きちんと誠実に回答すべきです。そこで納得してもらえば税務調査は無くなります。
※ちなみにやましいことがある方は「お尋ね」段階でミスを認めてペナルティを受けた方が損失は少なくて済みます。
おわりに
税理士業界に入って15年。多くの方の申告に携わってきましたし、税務職員の方ともたくさん意見交換してきました。納税者の中には税務署に対して挑戦(挑発)的な方もいます。我々(税理士)は独立公正な立場で仕事することを法律上強制されており 両者の間に立つ調整役としての機能を期待されます。
ただ、報酬は納税者から頂いているので若干納税者寄りになっていることが多いのは事実。ネットを見ると「税理士は税務署の味方だ」という批判をよく目にしますが、笑。上述の通り法律で縛られる(独立公正な立場を守らなければならない)ので、度を越えた挑戦的な経費計上や租税回避行為、脱税行為については泣く泣く苦言を呈するしかないのです。
なんで報酬払っているのに味方してくれないの?と感じるのはこの点かも知れません。 我々の発信力不足を反省すべきかもしれません… が、法律に縛られない税務コンサルタントさん(無資格)が耳障りのいいことばかり発言しているので非常に厄介(迷惑)だったりしてます。
彼らは責任を取る立場にない(安全な)ところから納税者にとって心地よい事ばかり言って閲覧数や視聴数を獲得したいだけか?と疑いたくもなります。裁判例一つを取っても置かれている状況が変わると全く違う結果になるので鵜呑みにしない方が良いです。
例えば、ある裁決を基に「フェラーリは経費になる!」と言う人がいます。その引用している裁決ではフェラーリ以外に高級車3台所有していてそれらは経費にしていなかったという背景があります。フェラーリ1台しか持っていない人が同じく全額経費(業務用)になりますか?
大事な部分を開示せずに耳障りのいい所だけ切り取ってはいけません。「高級車4台買えば1台は経費になるかもしれません」と言わなければ当該裁決を引用してはいけないと私は思います。この場合、わかりました~高級車4台買います!となりますか?
フェラーリに限らず、危ない経費(黒に近いグレー)を絶対大丈夫!と言っている方は税務調査を受けていないだけか、他にもツッコミどころがたくさんあり過ぎてその部分が見逃されたか、いずれかのケースが多いのではと推測してます。
以前、税務職員の方に挑戦的な人に対してどう思いますか?と訊ねたことがあります。めちゃくちゃ闘争心が湧き出てくるそうです、笑。あまり彼らを煽ることはおススメしません。「お尋ね」を無視するのも十分挑戦的な行為。私の記事を読んでくれた皆さんにはしっかり回答してもらいたいです。
今日はここまで、また次回も宜しくお願いします!
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