12月10日に令和4年税制改正大綱が自由民主党・公明党から公表されました。今回の相談「住宅ローン控除」についても改正が入りました。記事にしました。ご参考まで。
住宅ローン控除の制度概要と改正の背景
ご存知の方は多いと思いますが、まずは概要を簡単に。
ほとんどの国民がマイホーム購入にあたりローンを組むはずです。このローン返済には元本返済の他、利息支払も含まれています。この利息支払について補助をする目的で「住宅ローン減税」制度が設けられています。現行制度は年末(12月31日)時点残高の1%。
今回の改正で控除率1%→0.7%に引き下げられます。現在の住宅ローン金利相場をネット検索すると変動は1%を大幅に下回っているし、10年固定でも1%を切る金利。当該市場状況に合わせて控除率も引き下げるという流れになりました。
税制改正大綱では以前から「毎年の住宅ローン控除額が住宅ローン支払利息額を上回る状況が生じている」と指摘しています。益税が生じているので是正するための改正をします、ということ。あくまで利息補助が趣旨なので利息を上回る補助はおかしいのでは?という論理です。
住宅性能ごとに限度額が設定
上記ブロックで年末残高の1%とか0.7%など控除率について書きました。ただし、いくらでも認めている訳ではありません。限度額が設けられています。例えば1億円借入残高があっても、その1%や0.7%相当額が控除される仕組みにはなっていません。上限があるからです。
現在カーボンニュートラル実現に向けた政策を政府が推し進めています。住宅ローン控除についても住宅性能に対応した限度額を設けました。例えば令和4年に入居する場合は下記です。
●認定住宅…5000万円
●ZEH水準省エネ住宅…4500万円
●省エネ基準適合住宅…4000万円
●それ以外…3000万円
環境に配慮した住宅ほど借入限度額が高くなっています。逆に消費税率引き上げ(8%→10%)に伴う反動減対策としての上乗せ措置は終了します。
新築なら13年間へ
0.7%に控除率が引き下げられる→令和3年中に買い急ぐ必要がある(あった)のか?という冒頭相談についてです。まず購入予定の物件が新築なのか中古なのかを確認してください。令和4年以降は控除期間が新築・中古で異なるからです。
新築は13年間で現行制度より3年間延びます。よって新築購入予定の方が無理に現行制度に駆け込む必要はないと考えます。控除率が下がっても控除期間が伸びていますから場合によっては控除総額が増えるかもしれません。※消費税増税による期間延長(3年)規定は消費税差額2%部分が限度。
中古住宅の場合は現行法と同じく10年間です。よって、1%控除である現行法の方が有利に。ただ、間に合うのかが問題ですね(既に12月に入ってます)。マイホーム購入は人生で最も大きな買い物です。焦って決めるのはおススメしません。また、焦るのは値段交渉上も好ましくない。「時間が無い」という弱みを見せることになります。本体価格が大きくなっては意味がありませんよね。
ちなみに、新築の期間延長は感染症の影響によって経済状況が厳しいという理由から当面の間認められたものであり今後の経済状況によって必要な見直しを行う、としています。購入予定の方は当該措置終了について注目する必要があります。こちらも駆け込み需要を狙った本体価格値上げが予想されるので準備は早めの方が得策かと。
おわりに
今回の住宅ローン控除改正でもお金持ちに対し増税が入りましたね。住宅ローン減税には所得制限があり現行3000万円以下とされていました。3000万円超は滅多に見たことがないので所得制限について迷うことはありませんでしたが一気に2000万円以下に引き下げるようです。
1/3を引き下げるわけですからね。庶民(私も含め)からすれば2000万円もあれば十分でしょう?ということなのかもしれませんが…大幅な引き下げです。会社経営者は自分の給料を自分で決められるので影響は少ないでしょう。 要件に合うように自分の報酬を引き下げれば良いからです。 住宅ローン控除は非常に大きな減税になります。利用できるのなら利用したいところ。
エリートサラリーマン(2000万円超3000万円以下)が気の毒ですね。今まで受けれていたはずの減税が受けられなくなります。格差是正が政策トレンドになっているのでこの傾向は今後も続くはず。これまでも多くの高所得者向け増税が実行されているのでご承知の通りかもしれません。住宅関連では住宅取得資金の贈与にも改正が入りました。限度額の引き下げが行われます。これも格差の固定化防止等の観点から、とのことです。
富裕層の皆さんに負担をお願いする一方で、明るい未来への道筋もしっかり見せて欲しいな~というのが近年税制改正に対する個人的な感想です。負担をお願いし続けることにも限界が来るのではないでしょうか。日本は経済成長率が長い間低迷していると言われています。経済成長が無い(ずっと低迷している)国で明るい未来を描くことは難しいでしょう。超高齢化社会が進む日本において困難な舵取りを迫られていると思いますが、現政権の皆さんに期待したいと思います。
今日はここまで、また次回も宜しくお願いします!
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