相続税申告が必要となる富裕層にとって相続が発生すれば税金が差し引かれた上で次の世代に引き継がれます。非課税制度があるなら是非利用したい、と思う方は多い。記事にしてみました。ご参考まで。
教育資金の一括贈与
将来必要となる教育資金を援助した場合に非課税となる制度があります。2013年に高齢者が保有する資産を若い世代へ移転させることを目的に創設されました。
父母・祖父母等が金融機関に子・孫等名義の口座を開設し教育資金を一括して拠出した場合に1500万円までは贈与税が掛かりません。年齢制限があり30歳未満の子・孫等が対象です。創設の背景と教育資金援助という目的から年齢制限があるのは仕方なしでしょう。
使用用途は「学校等に支払われる授業料や学用品費等」及び「学校等以外の者に支払われる学習塾や水泳教室等の費用」となっていて思ったより範囲が広いと感じるはず。予備校代や習い事も含みます。
※後者については500万円が上限です。
結婚・子育て資金の一括贈与
教育資金とおおよそ同じ目的で結婚・出産・育児に要する資金を援助する場合に非課税となる制度が2015年に創設されました。少子化対策も兼ねていると思われます。
父母・祖父母等が金融機関に子・孫等名義の口座を開設し結婚・子育て資金を一括して拠出した場合に1000万円までは贈与税が掛かりません。こちらにも年齢制限があり18歳以上50歳未満となっています。※民法の改正により20歳→18歳になりました。
使用用途は「不妊治療や分娩費、子供の医療費など妊娠、出産及び育児に要する費用」や「挙式費用や敷金等新居費用など、結婚に際して必要な費用」。こちらも広めですよね?
※後者については300万円が上限です。
税制改正について
ここ最近、贈与税の改正が続いています。相続税を逃れる為にこれらの非課税制度が利用されているとの指摘を受け近年2019年、2021年と税制改正がありました(縮小の方向へ)。少数派である富裕層への増税は世間(世論)から受け入れられやすく反対意見も多くなかったと思います。
超高齢化社会が進む中で社会保障費の増大は深刻です。税収不足を補うためのこれからも増税が続くでしょう。民主主義を採用している我が国では多数派意見が反映されます。担税力(税金支払能力)の観点から言っても真っ先に富裕層への増税が検討されるのではと推測します。
2019年改正では23歳以上の者への教育資金贈与の範囲が狭められました。また、受け取る側の所得制限(1000万円以下)も設けられています。2021年改正では相続発生時に残額があれば孫やひ孫への贈与は相続税2割加算が適用されることになりました。いずれも増税です。
おわりに
政府発表によると①教育資金贈与②結婚・子育て資金贈与ともに利用者は少ないようです。特に②が少ない。年間約200件。このような利用状況を受けて税制改正大綱では次の適用期限をもって「制度の廃止も含めて検討」となりました。
通常これら上限額を贈与すれば結構な税金が掛かります。大金を次世代に引き継げる富裕層にとって魅力的な非課税制度が…なぜ利用者が少ないのでしょうか。贈与できるほどの富裕層が世の中に多くない?心情的(お金を渡すのは良くないという)なもの?現場感覚からするとそうではなさそうです。
「めんどくさい」という声をよく聞きます。毎年領収書を集めて銀行等に提出しなければなりません。非課税を受ける側(メリットを享受する側)は義務感を持って領収書を集めようとしますが、受け取る側の金融機関も保管・確認にコストを掛けることになります。金融機関にとって利益が取れる仕事にはなっていない模様です。
金融機関が積極的でない点も広がらない背景にあるかもしれません。実際に金融機関に相談したら「やらない方がいい」と言われた人もいました。
そして、そもそも論を一つ。国税庁は「扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」に贈与税は掛からないと言っています。非課税制度を利用する場合のように一括で1500万円を引き継ぐことはできませんが、教育費を都度直接支払ってあげる分にはそもそも贈与税は掛からないのです。みんなこちらを採用しているという事ですね。私自身も都度援助の方法を取ると思います。
子供・孫達にはまずは心底熱中できるものを見つけて欲しいです。そこへの援助は惜しまないつもり。決意が未熟と感じた場合は甘やかさないようにしたい…が、どうなるでしょうか。孫はまだいないので未知ですね。私の両親は私には厳しかったけれど孫には甘いです、笑。
今日はここまで、また次回も宜しくお願いします。
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