基本的には法人でも個人でも自分の好きな方にしてください、という意見です。税理士の事情(確定申告期は忙しい)から「法人にして欲しい(決算期をズラして欲しい)」と提案することはありません。私の場合、個人事業主の方の依頼は「余力がなくて受託できません」、「スケジュール的に難しいです」と正直に伝えてます。
例外として、初回面談時にビジネス状況を伺って明らかに法人有利と判断したら「法人が良さそうです」という進言はします。税理士ですから税制面から見てという前提ですけど。今回は、なぜ法人?について少し触れてみます。ご参考まで。
信頼感、信用力
事業拡大を積極的に進めるつもりなら、資金調達(借入・出資)や人材採用をすることになるでしょう。法人形態をとっているという理由だけで信頼できるわけではないことを私は知っています。…が、世間的には結構な割合で形式が気になるようですね。取引先から『法人でないと取引できない』と言われました、はよく聞く話。
法人・個人を問わず、本来その中身が重要なはずです…けれど、何となく法人の方がイメージが良いという状況です。上場企業以外で財務内容を一般公開している会社は無く、外部から中身を伺い知ることができないという理由もあるでしょう。皆さんも就職する際、取引先を選定する際、など『個人』か『法人』かで迷ったら『法人』を選択する確率が高いのではないでしょうか?形式だけであっても当該イメージが個人と比較してメリットになります。
法人は登記が必要であり会社の住所だけでなく、代表者の住所も公表しなければなりません。こういった所も悪いことはできない=信頼感に繋がっているのかもしれませんね。いずれにしても、信頼感、信用力の面からは法人有利となります。
借入、人材採用、販路拡大を考えている個人事業主は法人化も検討すべきでしょう。
相続・事業承継がラク
事業を自分の子供に継いでもらいたい、と考えている方も多いのでは?私も子供達の人生は子供達のもの、と思う一方で…1人ぐらい会計税務に興味を持ってくれないかな~?と淡い期待をしてしまいます。皆さんも同じではないかと。
事業を引継ぐ場合、個人事業は手間が掛かります。各種財産の名義変更・各種契約に係る契約者変更など面倒です。一方、法人は株式を後継者に引継ぐだけ済みます。手続きはとてもシンプルでラクです。※非上場株式の評価はそれなりに大変です。また、相続税や贈与税の対象になります。
法人設立後は自社株の評価が低ければ少ない税負担で子供に引継ぐことができます。逆もしかりで、高い時に相続が発生してしまうと税負担が重くなります。タイミングを見計らって贈与を考えると良いでしょう。常に利益が出続けると予測される(そんなこと滅多にないとは思いますが)場合は、早めに贈与すべきです。利益が出続けると株価も上がり続けるので。
これから法人化を考える、かつ、儲かると予測するなら子供に最初から株式保有させることを検討しても良いでしょう。儲からないと思って起業する人はいませんが、絶対儲かるとも言えないので悩ましいところではありますが…贈与する手間が省けます。
贈与の手間が省けるメリットは、贈与時の株式評価をしなくて良いのでコスト削減できます(贈与税申告料も含む)。ネット検索して頂ければ分かりますが非上場株式の評価は結構な報酬が請求されます。
税率差を考える
所得税も法人税も儲けに対して税率を掛け税額を計算します。ただし、税率が所得税と法人税では違います。所得税は超過累進税率を用いて所得(儲け)が増えるにつれて高い税率(7段階)が設定されていて、現行法では5%~45%です。一方、法人税は中小企業の場合、課税所得(儲け)が800万円まで15%、800万円を超えると23.2%でそれ以外の区分がありません。
儲けに対する税金は所得税・法人税だけではありません。個人事業主は所得税の他に住民税と事業税が課されます。住民税は儲けから所得控除を差し引いた額に対して10%、事業税は儲けから290万円差し引いた額に3%~5%です。個人事業主の全体的な税負担(所得税・住民税・事業税)は、儲けに対して最高60%、細かいことを言えば復興特別所得税2.1%もあるので60%超えです。
法人も同様に住民税・事業税が課されます。ただ、法人の全体的な税負担(法人税・住民税・事業税)は25%~35%ほど。課税所得800万円以下で中小企業ならば25%(最小)の方に近づくはずです。起業して間もない頃はこの範囲に収まることが多いでしょう。
このように所得税率と法人税率の差がある為、仮に儲けがたくさん出ているとしたら「法人にした方が良い」となります。法人の場合は最高でも35%程度しか掛かりませんから。
おわりに
今回もいつも通り3点をご紹介したわけですが、この他にも法人有利な点もあれば、逆にデメリットとなる点もあります。追々ご紹介していこうと思ってますのでお待ちください。
「徳永さんは法人化しないんですか?」と聞かれることがあります。「儲かっていないので…」と言えばそれまでなんですが、笑。それとは別に根本的な問題で法人になれません。税理士事務所(個人)→税理士法人になる為には2名以上の税理士を社員とする必要があります。この要件を満たすことができない為、法人になれません。税理士に『ひとり社長』を認めていないのです。
ならば、知り合いの税理士と組んでやれば?と思うかもしれませんね。実際に知り合い同士で法人化している事務所さんは多いはずです。ただ、私は躊躇しています。知り合い(友達)は知り合い(友達)のままでいる方が幸せかな~、と。事業を共にすることによりお金が絡み、揉めて仲違いをするという場面をクライアントさんで沢山見てきました。それは税理士業であっても例外ではないと思うので。
私は規模によるメリットを享受できなくても①自分に全決定権があること②自分の決断に自由度があること、を今は選択したいと思っています。それが『私』を選んでくれたお客様の為になると信じていますゆえ。
今回法人化した場合の税制面についてのメリットを3点あげました。ただ、税制面のみで法人化を決定するべきではありません、様々な要素が絡み合って社会活動は行われているわけで他の要素も検討して慎重に判断してください。私のように規模のメリット、税制面でのメリットより、優先すべき事項(大切にしたい事)があるという方もいるはずです。
※冒頭、個人事業主の方の依頼は基本的にはお断りしていると書きました(友人・知人・親族の紹介で既にスケジュール9割が埋まっている状況)→ただし「法人化予定なので今年だけでも…」という方のご依頼は期待に沿えるよう調整しています、何なりとお申し付けください。スケジュール9割の理由はここにありますから。ご相談が多かったところなので記載させて頂きました。私事ですみません。
今日はここまで、次回も宜しくお願いします!
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