平成30年に配偶者控除の改正が入り、ややこしいことになりました。自分の所得(サラリーマンであれば年収)と奥様の所得によります。会社に勤めていれば経理部の方がよくご存じなので聞いてみてください。自営業の方はこの記事を参考にして頂ければ。扶養控除も含めて記事にしました。
低く見積もってもバレます
冒頭、奥様の所得によると書きました。控除の性質から考えて所得が多いと対象から外れる、は感覚的に理解できると思います。経済面で生活を支えているから控除対象にしようという理屈で成り立っている制度なので。では、奥様の所得を低く見積もって提出すれば配偶者控除が受けられるのでは?と考える人も出てきますが…調べれば簡単に分かることなのでやめましょう。
奥様の働いている会社は支払った給与情報を税務署、市区町村に提出します。市区町村に対しては住民税計算する必要がある為、支払った金額が少なくても全社員の情報を提出する義務があります。この住民税計算の過程で配偶者控除や扶養控除が適正かをチェックされます。適用外が判明すると税務署にも連絡が行き、税務署から扶養控除等の控除誤りの是正についてという通知が来ることに。バレますよね?訂正する作業などが無駄なのでやめましょう。
ただし、奥様・息子さん・娘さんが隠れて所得を得ているケースもたまにあります。この場合は知りたくない事実をこの是正通知によって知ってしまうことになるかもしれません。。。良くあるケースは風俗アルバイト等、家族に知られたくないお仕事をしているケースです。個人事業主であれば、家族内の話ですみますが…会社勤めの場合、深刻な状況になる可能性大です。会社に控除申請をした家族の勤務先情報が流れてしまうかもしれません。
控除を受ける際には家族間で良くコミュニケーションを取りましょう、といっても正直に話してくれるとは思えないので対策は無さそうですが…。
扶養親族の範囲はすごく広い
6親等内の血族と3親等内の姻族と税法は言っています。ん、何それ?となりますよね。覚える必要はありません。顔を合わせたことのある親族なら、99%この範囲に含まれていますので。顔を合わせたこともない親族を扶養するのは一般的には考えられません。あなたの知っている親族を扶養するならおおよそ該当する、と考えて頂ければ結構です。
扶養控除の要件として、他にも生計を一にしていることが要件になっています。制度の性質上、配偶者の場合と同様に経済面で支援していることが必要です。「一緒に住んでないとダメでしょうか?」とよく聞かれますが生計を一にするか否かと同居・別居は関係ありません。地方の大学に通う一人暮らしの子供も、地方の実家にいる両親も対象になります。経済的支援をしていて当該親族の所得が低い場合(いわゆる103万円の壁など)に対象になります。
また、個人事業主さんの家族限定の話になりますが専従者給与をもらっていないことも要件になります。専従者給与を受けるかor控除を受けるかの選択になります。所得がたくさんあるなら専従者給与の方が家族としての税負担は少なくなります。どちらを受けるかの検討が必要です。
〇〇の壁、注意が必要なのは…
2018年配偶者特別控除の改正により「妻のパート収入、150万円になっても配偶者控除と同じだけ控除受けられるんですよね?」と相談されることがありました。おっしゃる通り、税法上の控除額は103万円以下に抑えた場合と変わりません。ただし、注意したいのは社会保険の方。社会保険の扶養から外れてしまうと奥様は単独で健康保険料と年金を納めなくてはいけません。
法人代表者(会社員)は、奥様を扶養していることが原因で社会保険料負担は増えません。本人の報酬(標準報酬月額)を基に社会保険料は算定され扶養親族の数は関係ないのです。よって、奥様が社会保険を単独で支払うことになると家計としては支出が増えます。社会保険の負担は重いものです。給与明細を見て頂ければわかる通り手取額が減る大きな要素になっています。
では、社会保険の扶養から外れてしまう年収は?というと、細かい規定はさておき奥様が60歳未満であれば130万円と覚えていただければ結構です。ただ、※大企業のパートさんですと106万円の壁というラインもありますのでご注意を。うっかり130万円だと思っていると外れてしまいます。
※501人以上の企業、月8万8000円以上、週20時間以上、雇用期間1年以上見込み
他にも、配偶者手当、家族手当など福利厚生が充実した会社もあります。おそらく社内規定で所得の壁が存在します。その額を超えると結果として家計はマイナスになることも。所得控除による減税額は変わらず年収が少し増えたけれど、パートナーの手当消滅の方が大きかった…とならないように気を付けましょう。
おわりに
国の統計調査を見ても共働き世帯が専業主婦世帯を逆転してすでに20年近く経ちました。逆転後の差も拡大中です。我々の両親世代(団塊の世代)と違って共働きが当り前の時代です。政府も共働き世帯を後押しする為の政策を実施しています。
「一億総活躍社会の実現」「女性の活躍促進」など、キャッチフレーズを見れば明らかです。このような時代背景は当然ながら税制にも影響を与え、2018年(平成30年)配偶者控除・配偶者特別控除の改正が行われました。菅政権は安倍政権を継承するとしています。基本的な方針は同じ、という前提で今後の世の中を予測して良いのではないかと。
本文では該当者がほとんどいないので書きませんでしたが、共働き世帯を応援する為の配偶者特別控除を拡充する一方で、一人で何千万も稼ぐ方は奥様(夫)が低所得であっても控除は受けられなくなりました。つまり、控除を受ける側にも所得制限が設けられたのです。
給与であれば年収1120万円から控除額が徐々に削られ、1220万円を超えると控除が受けられません。ただ、このような高所得の方は世の中にほとんどいません。だから、本文には書きませんでした。
影響は極めて限定的で自分には関係ないと思うかもしれませんが、近い将来あなたのビジネスが成功し該当する日がくるかもしれません(きっと、それを目指して日々研鑽しておられるでしょう)。普段から様々なシミュレーションを怠らないよう。
私の場合…
①法人を作る
②控除受けられる額で役員報酬を設定
③自分への役員報酬以外で、できる策を考える(もちろん無駄使い以外の節税策)
以上です。
税理士法人設立には資格登録者2名以上が必要なため今は考えていません。ひとりが気楽で自分には合っていると感じますので。私が法人を作るとしたら税務代理以外のビジネスになるでしょう。先輩社長さん達にいろいろ教えてもらいながら検討を進めようかと。
配偶者控除を受けるためだけに法人を作る方はいないと思いますが、控除を受けられるように設計することは可能ですよという話でした。多くのメリットがある法人化ですが、メリットだけではありません。デメリットも踏まえた上で、慎重な判断を。
今日はここまで、また次回もよろしくお願いします!
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