今のところ私からは、法律で決められている、従わなければ罰せられる、だから払った方が良い、としか言えません…。立法機関の人間ではないのでルールを変える立場にありません。投票行為(選挙権行使)により間接的には関われますけど道のりはかなり遠いです。税理士に依頼すれば税金を払わなくてもすむ、と勘違いされている方が稀にいます。中には脱税指南をしてくれる人だと思っている方も…。どうでしょうか?記事にしてみました。
脱税指南しません!
昔も今も、日本でも海外でも、いかに税金を払わずにすむかについて多くの考察がなされてきました。法律の範囲内でやるのが節税、法律の範囲を超えてやれば脱税です。中間ぐらいの位置づけとして租税回避行為があるかな~という感覚です。我々は節税指南はしますが脱税指南はしませんよ。脱税は法律違反であり、それを勧めると我々(専門家)も処罰の対象となります。
最近の報道で持続化給付金不正受給に税理士が関わっているのではないか?という疑惑が掛けられていますが、もし事実であればとんでもないことです。こういう事例があると「脱税指南する人」というイメージを持たれても仕方ない、という雰囲気になってしまいます…。
意図的に事実と異なる報告をして納税を免れると脱税です。持続化給付金の不正受給も同様であり違反行為。ごく一部の税理士により、これまで業界全体で積み重ねてきた信用を大きく失墜させました。非常に迷惑な話です。税理士会も厳しい処罰を下して欲しいです。悪くなったイメージを回復するのがどれほど大変なことか、周りにどれほど迷惑を掛けているか考えてもらいたいです。
後半部分は経営者の皆さんには関係ない話でした。言いたかったのは、うまい話には簡単に飛びつかない方が良いということ。例え専門家からの勧誘であっても上述のような方もたまにいらっしゃいます。
じゃあ租税回避行為は?
パナマ文書で有名になりましたよね。租税回避行為は税法の網を上手に掻い潜り税金を安くする手法です。多額の報酬を専門家に支払う必要があるので一定規模以上の資産を持っている方が対象。これは文書に記載されている方の名前を見れば一目瞭然でしょう。
専門家にとってもかなり神経をつかう仕事となりますので、大手事務所しか取り扱えないのではないでしょうか。チーム(専門家集団)としての対応が必須になりますので。街の税理士(私を含め)に「租税回避スキームの提案をお願いしたいですけど」と言っても大抵は断られます。
なぜなら租税回避行為は100%認められる保証はないからです。違法な私法上の取引が無くても…です。経済的実質から見てその行為は認められない!と税務当局が指摘することがあります。最近の例ではソフトバンクが租税回避地(タックスヘイブン)を使ったスキームで939億円の申告漏れを指摘されました。
これらの(租税回避)スキームは一般的には大きな金額が動きます。責任の大きさから見ても大手事務所しか提案できない、というのが私見です。規模の大きさに比例して責任も増す為、支払う報酬も高くなります。
自己責任でやる分には
私の記事を見て頂いている方にはお馴染みの事を言いますが…専門家にもいろいろな方がいます。リスク許容度は事務所によって様々です。積極的にリスクを取る事務所もあります。小規模事務所には「断られる」だろうと言いましたが、受けてくれる専門家がいるかもしれません。対応可能な事務所を探してみると良いでしょう。
更に、1つ重要な事を言います。租税回避行為は脱税ではありません。違法性がないわけですから持続化給付金の不正時受給とは次元が異なります。報道番組を見ているとこの両者(租税回避と脱税)を同次元のものとして取り扱う報道が見受けられますが、正解ではありません。
ソフトバンクは脱税したわけではなく租税回避行為について当局から是正を求められ、見解の相違はあるものの自ら修正申告に応じたというのが真実です。不正を働いて税金を納めなかったかのような報道は間違いになります。
違法行為をしているわけではないので、是正を求められるリスクはあるものの自己責任でチャレンジするのはアリだと思いますよ。納税額を不当に引き下げる目的があったと明らかに認められる場合は難しいと思いますが、現行法上その線引き(どうなったら不当に引き下げる目的があったと判定されるか?)を明確にできているわけではないので。
おわりに
最後に自己責任でやるなら誰も文句は言わない、という話をしました。ただ、現在ある租税回避スキームが未来永劫認められるとは思えません。パナマ文書流出時の世論がどうだったか思い出してみてください。批判的な意見が大半を占めていました。多くの書籍も出版されています。
このような状況になると社会通念上不当と自信を持って言えるような場面では、法律上問題なくても税務当局は積極的に是正を求めてくると思います。当該文書がきっかけとなり世論は租税回避スキームの存在を知ってしまいました。今後は租税回避行為が社会通念(世論)上、応援されることは無いでしょう。そのことが当局にとっても大きな後ろ盾になるはずです。
そもそも論として世論の大きな後押しがあると法律改正が入ります。現在認められているスキームが将来利用できなくなる可能性は大いにあります。税の歴史はこの繰り返しです。抜け穴は大きくなれば必ず塞がれます。
「徳永さん、スキーム提案とかするんですか?」と聞かれることがありますが、提案することはありません。そういった分野の知識が不足しています。頭が悪いわけではないですよ、笑。この件に関しては自分軸をしっかり持っています。いずれ抜け穴が塞がれてしまう(世論が反対している)ようなところに人的資源を投入するのは無駄だと思っているからです。
塞がれてしまったらその知識は二度と使えません。経験が蓄積される仕事をしようというのが私の方針です。消費税還付スキーム(金売買)で売上を伸ばす会計事務所さんを横目に、乗り遅れてしまった…と少し後悔したこともありますけどね(笑)。このスキームも改正が入り使えなくなりました。自分軸を死守した、というちょっとした自己満足を味わった次第です。
本日はここまで、また次回も宜しくお願いします!
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