最近(ウクライナ問題前)まで株式市場は絶好調でした。金融緩和によってお金が市場に溢れていたんでしょう。投資をしている経営者さんも多いと思います。法人で有価証券を所有し、配当を受けた場合について記事にしてみました。ご参考まで。
源泉税が引かれています
今回は国内株式に係る配当の話をします。※国外の話はまた別の機会にさせてください。
口座に入金されている金額は受取配当金の総額ではありません。証券会社が源泉所得税を預って残りの金額を皆さんに支払っています。給料と考え方は同じです。皆さんに支払われる給料も事業者が源泉所得税を天引きして残額を支給していますよね。
法人側の会計処理としては配当金総額を計上する必要があります。証券会社からの案内や支払通知書などは捨てずに手元に残しておきましょう。当該資料に源泉徴収した税額などの情報が記載されています。それを基に会計処理を行います。
法人税法上は調整が必要
会計処理については上記ブロックの通りですが、別途二重課税という問題があります。
配当金の出所を考えてみましょう。原資となる配当可能利益は法人税を引いた後の金額になります。支払側で既に法人税負担をしてから配当するわけです。にもかかわらず、受取側でも受取配当金として収益計上し、増えた利益に対して税金が取られてしまうと二重で法人税を支払っていることになります。
これは正しくない(公平ではない)ということで法人税法では受取配当金については二重課税を排除するための調整がなされます。納税者にとって税金が減る処理なので失念しないようにしましょう。ちなみに海外法人からの配当金については日本国内の二重課税問題が生じないため対象外です。
※外国子会社については別途規定がありますが今回は省略します。
短期保有には適用されない
配当基準日以前の1ヶ月間に株式取得し基準日後2ヶ月以内に譲渡すると短期保有株式等に該当します。この短期所有株式等に該当すると海外法人と同様対象外です。なぜでしょう?理由は下記の通り。
株の値動きと関係しています。一般的には配当基準日直前に株価が上がり、基準日以後値下がりするという現象が起きやすい。結果として基準日直前で購入して配当を受取った後にすぐに売却すると(上記短期保有のケースでは)有価証券売却損が計上されることが多くなります。
このような状況下、受取配当金について二重課税を調整してしまうと税務上売却損(費用)だけが計上されることになります。配当金は入金されるのでキャッシュベースでは有価証券売却損が若干出ても会社に損はありません。にもかかわらず税金計算上売却損の分だけ所得が減る、となると当該短期所有が乱用される懸念が高まります。
よって、対象外としています。短期間で売却する場合には税負担増も含めて要検討になります。
おわりに
今回は受取配当金について書きました。配当金について二重課税を排除します!と言ったものの、税金計算上受取配当金全額を収益から差引くことはほぼありません。株式所有割合に応じて減額割合が決まっているからです。
株式所有割合が大きくなるほど減額割合が大きくなる制度です。冒頭の相談に出てくるような上場企業株式への投資はおおむね非支配目的株式(5%以下所有)に該当するはず。この非支配目的(5%以下)の1つ上の区分が「その他の株式」という区分で所有割合5%超~1/3以下です。創業家一族の方などはこの区分に該当するケースもあるかもしれませんね。
実務上出てくるとしたらこの2つのケース(大体は非支配目的)で減額割合は下記です。
非支配目的株式等・・・20%
その他の株式等 ・・・50%
よって、ほとんどのケースで法人において株式投資をする場合は配当金の80%部分について法人税が掛かると思っていただけばOK。もちろん本業の赤字があれば相殺が可能です。今日の記事が投資を始める際の一助となれば幸いです。
本日はここまで、また次回も宜しくお願いします!
コメント