「何かを変えることのできる人間がいるとすれば、その人は、きっと…大事なものを捨てることができる人だ。何も捨てることができない人には何も変えることはできない」(進撃の巨人27話より)
今まで通りにやる(前年踏襲)は、経験したことを再度やるだけなので気持ち的にとても楽です。…ですが時代は変化しています。最近はそのスピードも加速しています。気持ちの安寧も大事ですが、捨てる覚悟も必要かもしれません。記事にしてみました。
定番がいつまでも定番とは限らない
今まで定番と言われた「役員報酬」について今回は取り上げます。
皆さんは法人で利益が出始める(軌道に乗る)と役員報酬UPを考えるのではないでしょうか?期の途中で役員報酬を増額することができないので正確には翌事業年度UP又は予測ベースで利益が出そうだと判断したら役員報酬をUP→結果として法人の利益を圧縮したい、は良くあるケース(定番)です。
役員報酬の額にもよりますが、これが最近では正解とも言えなくなってきました。昨今の所得税増税と法人税減税の流れに原因があります。役員報酬を出すよりそのまま法人税を払った方が税負担は減るというケースも。
所得税は高所得者への増税を強めています。近年の改正で言うと基礎控除・配偶者控除の年収制限、給与所得控除の上限引下げなどなど、高所得者はターゲットにされています。絶対数が少ないので国民から理解が得られやすいのだ思います(多くの人が自分には関係ないので別にいい、むしろそっちからたくさん取って、となります)。
一方で、法人税は国際競争力を確保しようと税率を引き下げています。低税率国への流出を懸念してのことだろうと思います。国際社会で一定のルール作り(規制を含めて)をしない限り、税率引下げ合戦は続きそうです。
※ようやく最低税率の議論がなされました。それでも低税率国を配慮してかなり低めの設定(2021年7月時点で15%)高所得者に対する所得税と比較して全然低いです。
以上により、現行税法上で税負担はどうなのか?検討する必要があります。過去の常識のままでは損をします。税制改正は毎年ありますゆえ。
社会保険負担がきつい…
役員報酬の増額を考えるときに所得税率だけを考えてはいけません。他にも大きな負担がありますよね。そう、社会保険料です。従業員は会社が半分負担してくれるので約14%です。これでも十分大きな負担ですがオーナー会社(同族会社)の経営者にとっては会社負担分も従業員負担分も関係ありません。どちらも負担しています(約28%)。
ですから、経営者にとって社会保険料は現在の法人税率と同じぐらいの負担を強いられます。もちろん厚生年金は将来バックされるものなので価値観によっては払うという選択肢があってもよいのですが、経営者さんに真意を確かめるとCashが現時点で出ていくことを嫌う方のほうが多い印象。健康保険料UPは純粋に負担ですね。…という事は、そのまま法人税を払った方がいいとなるわけです。
社会保険に加入しなければいいのでは?という方がたまにいます。残念ながら社会保険の未加入は法律違反です。加入するかどうかを任意選択できるわけではありません。1人社長(従業員なし)であっても必ず加入しなければならない。世の中には未加入の会社がたくさんあって、知人から「入らなくて大丈夫」などのアドバイスがあるのかもしれませんが、これは節税ではなく法律違反をしています。ペナルティーがあるのでご注意ください。当然おススメしません。
※最近は年金事務所からすぐに通知が来ます。未加入の事業所をしっかり把握しています。
利益を出して借入利率を下げた方が…
銀行は慈善事業をしているわけではありません。貸したお金をしっかり利子を付けて返済してくれる会社と取引をしたいわけです。銀行の担当者の立場になってみてください。
お金を借りたいと言う2人の社長がいたとします。利益が出ていない会社と黒字経営を続けている会社でどちらに貸しますか?当然、後者になりますよね。彼らもリスクを負いたくないんです。幸運にも両社ともに融資の承認がおりたとして、借入利率は同じでしょうか?前者の方がリスクあるので銀行担当者としては高い利率を設定せざるを得なくなると思います。
借入を考えているならば、節税のために赤字にするなどもってのほかです。融資の承認すら得られない可能性も。貸したお金が返ってきませんからね。融資を検討しているのであれば銀行からの視点を気にしてください。おのずと何をすべきか分かるかと思います。繰り返しますが銀行は返すための原資(現金・預金など流動性の高い資産)を沢山持っている会社に貸したいのです。
節税目的で利益を圧縮した結果、高い支払利息を支払わされるというケースも目にします。バランスが大事です。行き過ぎた節税になっていないか検討してみましょう。
おわりに
私が業界に入った15年程前は法人税率が高かったため、役員報酬を多めに出して会社資金が足りなくなったら社長から借りる(社長借入)なんてことが良く行われていました。メリットがあったという事です。ただし、現在も同じことをやっていたらいけません。
過去の成功体験は捨てましょう。環境(税制)が変わったからです。今まで通りは損をします。思考を変えなければならない。昔も今も変わらない普遍的なものはないの?と問われれば、本当に必要なものを見極める力ではないでしょうか。
人材育成、採用、商品開発、広告宣伝、設備投資、新規出店など売上に繋がるであろう投資はいつの時代でも意味があります。その手法は日々変化していると思いますが利益が出始めたら検討する価値はあります。将来の利益に貢献するであろう支出をまずは考えるべきです。税金を安くすることが第一の目的になってはいけません。
アルミンが放った冒頭の名言「大事なものを捨てることができる人」も物事の真理を見ているんだ、と解釈しています。今回ちょっと強引過ぎましたかね、笑。ご容赦を。
※ちなみに生活費に見合う分の役員報酬はもちろん必要です。ご自身の生活に見合う適正な報酬を得てくださいね。それを超えて出すのは辞めた方が良いという話でした。ご参考まで。
本日はここまで、次回も宜しくお願いします!
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