ウチの実家も相続税申告の対象になってしまいますか?

税金

2015年相続税改正によって基礎控除が減額されました。つまり対象となる範囲が広がるということです。また、都市部の土地価格は最近上昇傾向にあります(コロナでどうなるでしょうか?)。基礎控除減額&資産価値上昇で今まで課税対象とならなかった世帯が対象となっています。今回は実家の相続について記事にしてみました。ご参考まで。

基礎控除は超えるか?

代々資産家の方は顧問税理士が既に付いていて対策もしっかりしていると思われるので、この記事では対象としません。今回対象となる方は基礎控除をギリギリ超えるか超えないかの資産をお持ちの方。最も良くあるケースが金融資産はほぼなく、都市部に持ち家があるという場合です。つまり資産の大半が実家の「土地」というケースです。

土地の相続税評価額には路線価を用いる、は皆さんよくご存じかと思います。実家の評価額は国税庁が公表する路線価に各種補正を加えて1㎡あたりの価格を算定し、面積を乗じて算定します。路線価のない倍率地域に該当する土地もありますが、今回の相談事例(都市部)では路線価が存在するはずなので路線価方式で土地を評価すると思って頂いて構いません。

現行法における基礎控除額は<3000万円+600万円×法定相続人>です。例えば、私は両親と兄の4人家族。仮に父が既に他界、母が実家に住んでいて相続が発生した場合(二次相続)の基礎控除は4,200万円になります。

1㎡約30万円(川口駅徒歩10分圏内)と仮定すると140㎡超で基礎控除を超えます。築年数が経っていて建物評価額はゼロに近いとしても金融資産ゼロということはないでしょう(いくらか貯金がある)。つまり、ローン返済完了後にそこそこ広い土地を持っているというだけで相続税申告の対象になります。

※埼玉県川口市でこの状況なので、都心に持ち家があれば対象になる可能性は更に上昇します。

特例は使えるか?

相続税納付の為に実家を売却するのはかわいそうだ、という趣旨から認められている制度があります。小規模宅地等の特例です。適用要件を満たせば土地の評価が80%減額されるという非常にインパクトのある制度です。適用を受けた結果、相続税がゼロになるというケースも多々あります。それだけに要件は厳しいと思ってください。

亡くなった方と同居していた親族が相続するなら適用できます。しかし、私もそうですが核家族化が進み、同居していないことが多いのではないでしょうか?ただし、別居の場合もあきらめてはいけません。賃貸物件に住んでいる子などが相続する場合にも適用できます。いわゆる「家なき子特例」と呼ばれるものです。持ち家がないから「家なき子」ってのも…という感じはしますが。

小規模宅地等の特例については、ここでは書き尽くせないぐらいに細かい要件があります。簡単なケース以外は専門家に相談してください。自力で解決しようとするのは非常にハードルが高いです。

※同居していても二世帯住宅で区分登記されているとダメ、老人ホーム入居によって空室になったので賃貸したら適用不可になった、などなどかなり複雑です。

事業用にも適用できる

両親が事業を営んでいる方もいるでしょう。趣旨は同じで相続税支払いのために事業用地を売却することがあってはかわいそう、ということで小規模宅地等の特例が認められています。

事業を営んでいた店舗や工場用の土地も対象になります。減額割合は自宅と同じく80%なので非常に大きい。賃貸経営に係るアパート用地や駐車場の場合は50%ですが、それでも評価は半額になります。親と別居していて子供達はそれぞれ持ち家があるという場合は検討すべき事項になります。適用要件を確認してください。

ただし、自宅も含め無制限に認められる訳ではありません。「小規模」ですから面積上限が定められています。実家なら330㎡、店舗・工場は400㎡、アパート・駐車場は200㎡が現行法の限度となっています。これを超えたら適用がなくなるということではなく、限度面積までは減額してくれるので安心ください。都心でも地方でも上限面積に変わりはありません。

富裕層で自宅購入を検討している方は1つの目安にして頂ければ。地方の広大な土地に豪邸vs同価格の都心の家では、特例適用を考慮すると後者の方が相続税負担は減ることになります。

おわりに

都心において330㎡(約100坪)あったら十分でしょう、一般的な感覚(世論)からすれば小規模?豪邸ですよね??との声が聞こえてきそうです。富裕層への増税はこれまでも数多く実施されています。上述にある通り2015年には基礎控除の減額がなされました。それまで<5000万円+600万円×法定相続人>だったことを考えると大幅な増税と言えます。

相続税だけでなく所得税も高所得者に対しては増税が続いています。残念ながらお金持ち世帯の比率は少ない為、富裕層向けの増税に関して世論の反対は期待できません。今後もこの傾向は続くのではないかと推量します。金融資産を多額に持つ超富裕層で日本にいなくても生活できる(収入がある)なら低税率の国へ脱出するという選択肢もありましたが、中小企業の経営者さん達で国内にいなくても収入あり、かつ、仕事も回る方は少ないはず。難しいでしょう。

また、国税サイドも非常に優秀ですから国外に財産を持ち出す際の課税も強化しています。日本に戻ってくることができない期間も伸びました。このスキームは通用しなくなってきていると言えるでしょう。プライベートバンカーさん達も苦労しているのではないでしょうか。今後も改正内容を注視する必要があります。世論が税制を動かすことは珍しいことではありません。パナマ文書が明らかになったあたりから富裕層に対する目は一層厳しくなりました。

小規模宅地等の特例についても購入当初の税制から改正が入り前提が変わることもあるでしょう。制度趣旨から考えて廃止されることは無いと思ってますが限度面積などは変わるかもしれません。適用できたらラッキーぐらいの感覚でいた方が良いのかもしれませんね。

相続税の対象となる範囲が拡大されたと言っても、亡くなった方の1割にも満たない「お金持ち(資産家)」に対する課税です。ほとんどの国民が無縁の税目。該当する皆さんは少数派であることに変わりはありません。よって、上述の通り課税強化がなされても世論の反対を期待してはいけません。法律の範囲内で資産の減らない方法を模索する(勉強する)しかありません。富裕層の方にとっては暗い話になってしまいましたね…。私自身も今後の動向を注視しつつお役に立てるよう精進します。

本日はここまで、また次回も宜しくお願いします!

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