会社をたたもうかと…。

税金

昨今の状況もあってか、残念ながら事業継続を断念するという趣旨の相談を稀に頂きます。皆さん驚かれますが、すぐに、そして簡単に会社をたたむことはできません。今回は法人の終わらせ方について記事にしました。ご参考まで。

どんな手続きが必要?

大きな括りで言うと2段階の手続きが必要です(用語を覚える必要はなし)。

①会社の解散手続
②会社の清算手続

解散事由はいくつかありますが冒頭相談ケース「株主総会の決議」による解散について書きます(9割ぐらいこれ)。

①で株主総会による解散決議清算人の選任官報公告の準備を行います。解散日から2週間以内が法務局への登記申請期限。各種書類作成と登記手続が必要(②の工程も同様)なことから、一連の業務を司法書士に依頼する会社がほとんどかと。

私自身も自力でやるのは難しいと思っていますから司法書士さんを紹介してます。予算がない方にとっては負担になりますね。自力でやったよ、という人も世の中にはいると思うので時間が無限にあればネット検索して挑戦してみるという選択肢もあります。

上述の通り期限があるので時間が無限にあるとは言えないんですけどね…。個人的にはプロに任せた方が良いと思います。②について後のブロックで。

法人税申告は最低2回ある

①で1回、②で1回の最低2回は税務署等への確定申告が必要です。つまり会計数値を2回固める必要があります。

実務上「会社をたたもう」と決意した時点から最初に訪れる決算日がそう遠くないならば、当該決算日(通常決算日)を解散日とすることが多い。理由は下記です。

法人の場合、税理士(会計事務所)へ申告依頼をしているケースが9割。記帳代行も併せて依頼していることが多いはずです。契約形態によってはすぐに数値が固まりません。最も料金の安い年1回会計報告をする契約(いわゆる年1契約)の場合、会計事務所は決算日近くにならないと動きません。つまり、何も入力(会計処理)されていない状態です。これでは解散手続に必要な財産目録の作成貸借対照表の作成ができません。

期日を前倒しして会計処理を依頼すると追加料金が発生します。早々に解散する必要がないなら決算日と同日を解散日に設定しよう、となって同日設定が多くなります。最も料金の高い毎月報告の契約であっても申告月の変更がある為、別途料金が発生するケースもあり得ます(繁忙期に解散した場合など)。税理士報酬は決して安くはないので要検討事項です。通常決算日と合わせることをおススメします。

※事業継続を断念しようとしている訳ですから多くの場合「年1契約」と推量します。

清算結了してようやく会社が消滅

解散日を設定して会計数値が固まったら2か月以内に確定申告をします。この解散申告が済んだら終了ではありません。皆さんよく勘違いしているので念のため。上述②清算の手続きが必要です。

…とは言うものの清算に係る会計処理のボリュームは少ない。残っている売掛金等の回収、資産(棚卸資産・固定資産)があれば売却、買掛金等の支払、借入金の返済など行います。貸借対照表を奇麗にする作業です。

ちなみに解散後は営業活動をすることができません。よって新規の売上や仕入は発生しません。会社に残っているものを処分するイメージ。全ての処分が終われば残余財産が確定します。この時点で残っているのは基本的には現預金と資本金になるはずです。

解散日の翌日から残余財産確定までに所得があれば税金が掛かります。2回目の申告(清算)は残余財産確定から原則1ヵ月以内。2か月ではないのでご注意ください。所得は発生せずに均等割(地方税)のみの納付が多いです。

この税務手続と並行して当該決算報告の承認を受けます(オーナー企業の場合は否決されることが無いので書類上の話)。そこから2週間以内に清算結了の登記申請が必要。司法書士さんに依頼すれば株主総会議事録作成など一連の業務を代行してくれます。清算結了の登記が終わり、税務署へ届出をすればようやく全ての手続きが完了です。

※冒頭相談のケースで現預金が資本金を上回っていることはほぼありません。よって「みなし配当」については書きません(混乱するだけなので)。もし、上回ることがあれば書籍や他の情報にあたってみてください。

おわりに

会計業界に長くいても解散・清算処理を実務で扱うことは少ないはずです。コロナ禍にあっても顧問先が解散手続に入るケース、そう多くはありません(本当に皆さん努力なさってます)。経営状況が悪化して解散に至る前段階で顧問契約が解消されてしまうという裏事情もあるでしょう。

が…私はこのマニアックな分野の経験は意外に豊富です。プロフィールにある通り特殊な会計事務所でキャリアを積みました。何が特殊かというとクライアントに一般企業がないんです。業界的に言えばSPC専門特化型事務所と言います。

SPC(不動産証券化)の世界では頻繁に会社設立→解散→清算が発生します。普通の会社と違ってペーパーカンパニーであり、従業員がいません。目的が達成された時点で解散し投資家に資産を分配します。富裕層の節税目的だったりもするのでスケジュール通りに解散することが多い。このような事情があり経験豊富に。

昔話ついでに会計業界を目指す後輩達に向けに発信を。SPC専門特化型事務所、振り返えると独立したい税理士は少なめ。理由は個人事務所でSPC案件の受託は難しい、かつ、一般企業の税務顧問でその経験を活かす場面がないから。解散・清算についてもペーパーカンパニーと違って立ち会うことは稀だし、明るい話ではなく、気分のいいものではありません。。。

「独立志望なら選ぶ事務所違くない?」という助言はたくさん頂きました。…が当時どこで経験を積むか全く考えてなかったです。スタートラインに立っていない(受験生)ので、立つことだけに専念しました。

条件も良かったと思います。拘束時間と給与のバランスが(特に前者)、笑。もし最初の職場選びを間違えたら私は税理士になれてません。過酷な状況下で試験に合格するような才能は持ち合わせてないので。とても幸運だったと思います。

経験を気にするのは税理士になってからで良いかと思いますよ(むしろそっちが先です…でないと、そもそも独立できません)。違和感のある助言は無視していい。納得できる助言だけ信じて進みましょう。私の意見もあくまで個人的見解です。以上です。参考になれば嬉しいです。

最後に、会社をたたむことになった皆様、経済環境の不幸も重なり不本意な面も多々あると推量します。再挑戦を考えている皆様へ。事業を成功させている多くの方が失敗をたくさん経験しそれを活かして『今』があります。皆様が再スタートを切れるまでの良い充電期間であることを願います。

本日はここまで、また次回も宜しくお願いします!

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