令和4年8月1日「所得税基本通達の制定について」の一部改正に対する意見公募手続きが実施中で、8月31日まで意見を受け付けています。どんな改正が行われようとしているのか?どんな影響があるのか?記事にしてみました。ご参考まで。
改正内容は?
8月26日現在、意見公募中で確定ではありませんが「その他雑所得の例示」・「業務に係る雑所得の例示」の2点について改正が行われる見込み。前者は該当者が少ない為か話題になっておらずネット上で飛び交っているのは圧倒的に後者です。副業サラリーマンがターゲット(対象)になり該当者は多いと思われます。内容は以下の通り。
「…その所得がその者の主たる所得ではなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証がない限り、業務に係る雑所得と取り扱って差し支えない。」
つまり、会社勤めでその給料をメインに生活&副業売上300万円以下だと事業とはみなしませんという事になりそうです。これまで税理士業界では事業所得になるかor雑所得になるかの線引きがあいまいで度々論点となってきました。それが明確になると言えばその通りですが…増税です。
「無税入門」只野範男(通称タダノリ)著に代表される攻めすぎた書籍が世間に広く知られタダ乗りが横行したことで国税が対応せざるを得なかったのかなと推測します。
改正による影響は?
副業サラリーマンは今後売上300万円超でないと原則として当該副業分は雑所得として取り扱われることになります。何が問題?という方のために事業所得と雑所得の取り扱いの違いについて書きます。
皆さんお馴染みの「青色申告」は雑所得に適用できません。「白色申告」をすることになります。①青色申告特別控除(最高65万円控除)適用なし②青色事業専従者給与適用なし③30万円未満の少額減価償却資産の特例の適用なし、です。
売上300万円以下なので②③の適用なしについては影響が薄いかもしれませんが①が痛いですね。経費65万円が消滅するイメージ。このケースの最高額である売上300万円と仮定した場合でも経費65万円は約22%です。一銭もお金を払っていないのに約22%もの経費がこれまでは認められていたことになります。なくなるのはかなり痛い。
更に国税サイドが強い問題意識を持っていると思われる「タダ乗り」についても規制されることになります。何故なら雑所得に係る赤字は給料とは相殺できないからです。いわゆる損益通算不可です。抜け道はいずれ塞がれる運命にありますね。私も「タダ乗り」はさすがにね…と思ってましたから。
赤字を作って給料と相殺したければ少なくとも300万円超の売上が必要になります。損益通算目的の人にとっては高いハードルではないかと思います。無税入門に書いてある当時の只野範男氏のケース、来年からは雑所得になります。
おわりに
雑所得になってしまうと地味に痛いのが「家事按分」ではないかなと。仕事に関係する部分(事業割合)が50%超でないと雑所得の場合は経費になりません。20%や30%ではダメなのです。
例えば、独身一人暮らしであれば賃貸物件50%超を仕事に使っていると言っても違和感ありませんが家族4人で暮らしている場合はどうでしょうか?3LDKの半分以上を仕事に使ってます!が通るかと言うと…難しい気がしますね。水道光熱費なども同様です。
①50%超でないと家事按分が使えない②本論で述べたようなメリットも享受できない、となると独立するインセンティブは間違いなく下がるでしょう。起業初期が最も売上が少ないはずですからね。国は副業(複業)推進派だと思ってましたが首相交代して流れが変わったのかもしれませんね。
個人的には無税入門にあるような赤字を給料とぶつける損益通算のみ防止すれば良いと思います。完全独立を目指している、でも最初の何年かは兼業せざるを得ないという健全な起業家まで増税になるは如何なものかなと。
また、売上ベースの区分けは職種によって不公平感が生れます。小売りや飲食など利益率が低い業種にとって売上300万円は比較的ハードル低めですが、コンサル業など利益率が非常に高い業種では月25万円の売上でも十分事業と言えるかもしれません。
…とは言うものの、いつも言っている通り全ての人が納得できるルールを作ることは不可能。課税の公平を図るうえである程度の合理性を持って線引きするという事が必要であり今回の改正に至ったのだと思います。概ね決定事項と思って間違いないでしょう。
300万円付近の売上を予測している皆さん、1円でも良いので超える努力を残り4ヵ月全力でやりましょう!今日はここまで、また次回も宜しくお願いします。
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