まだ法人税率下がるんでしょうか?

税金

一定程度の利益を出している経営者さんであれば個人事業より法人が有利と聞いたことがあるでしょう。私も過去に「法人が有利」に関する記事を書いてきました。その理由の一つが所得税との税率差です。世界的に法人税引き下げ合戦を繰り広げている中、日本も呼応して法人税率引き下げを続けてきたわけです…が、流れが変わるかもしれませんね。記事にしました。ご参考まで。

歯止めがかかるか?

2021年4月にアメリカのイエレン財務長官から最低法人税率に関する国際協調が提言されました。法人税引き下げ合戦は終わらせるべきだ、という趣旨です。

皆さん租税回避地(タックスヘイブン)という言葉を聞いたことはありませんか?日本から近い国で言うとシンガポール、香港があります。他にもケイマン諸島やバージン諸島などといったどこにあるの?という場所も会計業界では有名です。

租税回避地は他国に比べて税金が安いのが特徴で海外から企業を誘致したり、多額の投資を集めたりして発展してきました。日本よりも税負担軽い→じゃあシンガポールで会社を作ろう!という具合に。日系企業もたくさんシンガポールに進出しました。

この状況を日本政府も黙って見ている訳にはいかなくなり、税率を下げて対抗するようになったという訳です(日本だけでなく世界各国で)。要は価格競争に巻き込まれたということ。ウチの方が安いよ!というデフレ日本で目にした光景(低価格競争)に似ています。

イエレンさん発言で世の中の流れが変わるのかは明言できませんが、アメリカが世界に影響力を持っていることは誰もが疑いようのない事実であり、今後どうなるか興味があります。

※国際課税ルール改革を議論する経済協力開発機構(OECD)は7月の最終合意を目指しているようです。

経営者にとっては?

法人税率引き下げ合戦は経営者にとって歓迎すべき流れだったのでしょうか?考えてみます。

景気動向との関連性が高い法人税は環境要素も検討する必要があり一概に言うことはできませんが、税率を引き下げればその分の税収が減ります。対して国家予算は変わらないorむしろ増えている、としたら別の税収で補うしかないですよね?そこで目を付けたのが消費税。歴史を見れば分かる通りどんどん引き上げられてます。いまや国の税収TOPの税目になりました。つまり、法人税が下がった分を消費税で補っている、とも言えます。

私が小学生の頃は消費税はありませんでした。現在は原則10%です。小学生が文房具を買ったら1割も多くお金を払わなければなりません(お菓子は8%)。消費税分も小遣いに反映してもらいたいですよね、笑。これは当然大人の私達にとっても同じ。役員報酬・給料から買い物(消費)によって支払う税金は増えています。こうして全体としての税収は辻褄が合っていくのです。

ただし、消費税は法人税と違って商売をしていない人からも徴収します。オーナー経営者(中小企業経営者)の皆さんにとっては法人税減税効果の方が強いのではないかと考えます。物凄い浪費家は想定していません、笑。

結論としては今後も経営者さんにとって法人税引き下げ合戦を繰り広げてくれた方がありがたいというのが私見になります。イエレンさんやめてくれ~、といったところでしょうか。

世論はどうか?

かなり前の話になりますがGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)が租税回避地を活用して節税していることが話題になりました。おそらく2000年代の後半だったかと記憶しています。会計業界に入りたての頃、目の前のことしか興味のなかった私でさえAmazonが日本で1円も税金払っていない事に衝撃を受けた覚えがあります。こんなに日本で稼ぎまくっているのにズルくない??と。

この感覚が一般的(世論)なのだと思います。グローバル経済の発展によって低税率国への本拠地移転は珍しいことではなくなりました。当時の記事を読むとAmazonはアイルランドやルクセンブルクなどの租税回避地に利益を集中させ税負担を軽減しています。もちろん世界中から非難を浴びることになりました。

…が、しかしグループ全体の納税額に対して半分をアメリカで納めていた為、アメリカを味方につけることができたと言われています。当時日本の税務当局も課税を試みましたが「文句あるならアメリカ政府へ」と言われ、国家間協議となった末に日本側の主張はほぼ認められませんでした。協議の結果なのでどうしようもありません。

ではアメリカ人のイエレンさんがなぜこのような発言を?となりますが、あれから状況は変化しました。Amazonは現在日本で納税しています。細かい話は省きますが2017年からAmazon側が方針を転換したようです。おそらくは世論の影響です。

じゃあ解決したのか?→いやいや、まだまだ→最低税率導入しよう!という話に繋がってきます。「それでもなお、稼いだ額に対して納税額が少なくないか?」という事です。巨大IT企業は依然として低税率国に利益を集中させており、もはや放置できなくなったという背景があります。

インターネットの普及により節税スキームの存在が知れ渡るのも早くなっています。世論は当然ながら租税回避地を利用した節税に反対です。国際課税ルールを改革しよう(最低税率導入)!という気運が高まっています。

おわりに

法人税率引き下げには歯止めが掛かるか?と問われれば超大国アメリカが動いた以上その確率は高いと考えます。とは言うものの現状でも日本の法人税率は随分低くなりました。

ひと昔前は法人で利益を出すより役員報酬を限界まで出して所得税負担をした方が節税になるという時代がありました。日本の法人税率が高かった時代です。イエレンさんの発言を受けて今後どう動くのか?据え置くのかor昔の水準に戻すのか未来のことは私には分かりません。

現時点で言えることは前提が変われば対策も変わる、という事。経営者の皆さんは今後の動きに注目しましょう。役員報酬の改定を検討することになるかもしれませんし、個人事業主の方が有利という方も出てくるかもしれません。

2000年代後半から言われていたことが今になって動きだしている状況を見れば発言を受けたからといって早々にルール変更が行われるとも断言できませんけどね。問題認識は随分前からしていたのですから。国際協調が必要なテーマであり、まとめ上げるのは苦労するでしょう。それぞれの国の思惑があるので簡単ではないと思います。

個人的な思いはいつも言っている通りです。正しくないものは是正して欲しいし、いずれされるだろうと。公平な税負担が前提でないとフェアではありません。同じルールで競争したいものですね。きれい事を言ってますか?でも大概その流れに沿って遅かれ早かれ行きますよ。歴史的に見ても。

一時の不合理を突き利益を大いに享受して逃げる!という策もあるのでしょうが、私はできません。。。GAFAのような大金持ちにはなれませんね…笑。皆さんはどうお考えは如何でしょうか?私の考えが正しいと思ってません。何が何でもチャンスを掴みとるんだ!という気持ちも重要でしょう。

今日はここまで、また次回も宜しくお願いします!

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