土地の相続税評価にあたり不動産鑑定士の評価は必要でしょうか?という相談です。不動産鑑定士はその名の通り不動産を評価する専門家です。彼らの力が必要かどうか、記事にしてみました。ご参考まで。
多くの場合、必要なし
国税庁は相続税の申告にあたって財産評価基本通達というものを出しています。これに基づき財産の評価を行えば相続税申告ができます。「路線価方式」や「倍率方式」のことです。※今回説明は省略します。
これらの方法は恣意性が介入する余地はなく、客観性の高い評価方法となっていて国税側としても受け入れやすいです。自分たちが出している通達なので当然ですが。これに対して不動産鑑定士の評価はどうでしょうか?同じ土地でも不動産鑑定士によって評価額が全く同じとなることは少ないはず。
評価に必要な要素にそれぞれの主観が入る為、税務上必ず認められる(否認されない)とは言えない状況なっています。鑑定評価報酬を払っても意図する効果が得られない可能性があります。時価(市場価格)より相続税評価額が明らかに高いと感じるときでなければ鑑定評価を受ける必要はありません。
ちなみに相続税評価額が市場価格を上回ることは多くないです。公示価格の概ね8割に設定されています。
必要となるのはどんなケース?
上述でも少し触れた通り。市場価格を相続税評価額が上回る場合には検討しても良いでしょう。ただし、どのくらい上回っているかが重要になります。少々上回るぐらいでは相続税の減少額(節税額)と鑑定評価報酬を比較して割に合いません。結局コスト増になるならやらない方がマシ、となります。
国に払うぐらいなら知り合いの鑑定士さんにという事情がある人は止めません。税理士も同様で「国に税金として払うぐらいなら少々総額が膨らんでも徳永さんに払いたい」といってくださる方はいます(士業とはそういう方々に支えられている職業でもあります)。
市場価格が相続税評価額より低いケースとは?を具体的に考えてみました。想定されるのは需要が急激に下がる事故が起きた場合です。大震災で液状化が発生した、水害によって水没した、がけ崩れが発生した、などなど。自然災害の影響で急激に需要が低下している土地(地域)は鑑定評価を検討してみても良いかもしれません。人気エリアが一転して…というケースもあります。
鑑定士さんはどうやって評価している?
概要を掴んでもらいたいだけです。私も鑑定士ではないので詳細は分かりません。どのように評価しているか概要が分かれば鑑定評価額の方が「低い評価」になるか予測しやすくなると思い下記に。
鑑定士さんは二つの方法①取引事例比較法②収益還元法を使って不動産価格を算出しています。
①周辺地域の取引事例を収集してその売買価格を参考に、個別事情を勘案する方法
②対象物件が将来生み出すであろう収益の現在価値を総和して価格を算定する方法
※簡素に書いています。詳しく知りたい方は書籍などを参照ください。
①と②それぞれに主観が入りますね。どの取引事例を収集するのか?個別事情を勘案って?将来の収益っていくら?などなど。①②どちらに比重を置くかによっても価格が変わってきます。結局いくらになるのか分からない、予測できない、という結論になりお叱りを受けそうです、笑。
結局「鑑定評価はある程度目指したいゴールに近づけることが可能」ということになります。相続税評価に係る鑑定依頼なら価格を抑えたいという目的(ゴール)に寄り添ってくれるわけです。よって、税務署も鑑定評価をやすやすと受け入れることはできない、というリスクがあるのです。
おわりに
長らく不動産に係る税務に従事していますけど、不動産鑑定士さんと直接の付き合いはいまのところないです。つまり税務申告で必要となる場面は少ないと言えます。
SPC(不動産証券化)専門特化型事務所に在籍中、資料として鑑定評価書を眺めることはありました。投資家への説明資料(エビデンス)として不動産鑑定評価書が必要だったのでしょう。
会計処理と関係がない為じっくり見たことは無いですが、昨今の経済状況や人の出入りなどの詳細な分析があって「へぇ~こういうのも価格に反映されるんだ」と感心した記憶があります。学生時代に不動産に係わる仕事がしたいと思っていたので興味深く拝見させて頂きました。
※毎年発表される公示価格の算定根拠に不動産鑑定士さんの鑑定評価書が添付されていますので、興味のある方は見てみてください。
https://www.land.mlit.go.jp/landPrice/AriaServlet?MOD=2&TYP=0
資格の専門学校では宅地建物取引士試験に合格するとステップアップとして不動産鑑定士講座の案内が送られて来ます。同期で不動産鑑定士を目指してスクールに通っている友人もいました。私は税理士講座も受けていたのでダブル取得はしんどい(稀にダブル取得の方もいますが…)。鑑定士講座の受講は断念したことを思い出します。
私自身、承認欲求が強かったのか、自分の実力を誇示したかったのか、様々な資格に手を出そうとしました。社労士、中小企業診断士など他の難関資格も揃えようと資料請求してみたり、 英語にも結構な時間を費やしました。全く無駄になるわけではないのですが、効率の良い時間の使い方だったとは言えません。とても後悔してます。無駄な時間を過ごしたな~と。
私に期待されているのはあくまで税務会計分野。税務会計の現場で起きる問題点(実務)にひたすら取り組むことこそ、私が最も皆さんのお役に立てる可能性が高いと独立してから気付きました。めちゃくちゃ遅い、笑。会社員をしているとお客様だけでなく社内(ライバル)も気になりませんか?そんな理由からあれこれ手を出してしまったのかもしれません。全く自覚は無かったんですけどね…。
誰かのお世話になっているときには気付かないことが多い。平均的に何でも少しだけできるより圧倒的な強みを1つ持っている方が選択されやすい時代になっているな~と感じます。目立ちますから。私はひたすら税務会計を尖らせようかと。現在の時間の使い方はこれだ!と信じて。皆さんは如何でしょうか?あれもこれもできてしまう天才は実際にいます。
今日はここまで、また次回も宜しくお願いします!
※宅地建物取引士、管理業務主任者については尊敬する先輩から経済学部出身者が法律知識として最低限押さえておくべき知識が詰まっていて必要だよ、と言って頂いたので「良し」とします、笑。
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