核家族化が進んでいる日本で利用予定のない実家の売却を考えている方は多いのではないでしょうか?ニュースでも空き家問題が取り上げられています。売却を考えている方向けに用意されている制度はあるのでしょうか?記事にしてみました。ご参考まで。
利益が出れば税金が掛かります
不動産を売却して儲けが出れば原則として税金が掛かります。「儲け」ですから売却金額そのものではありません。物件の取得費用や売却に係る費用(仲介手数料、測量、印紙、取り壊し費用など)を差し引くことができます。その結果、利益が出ていればという話。
冒頭相談のように個人が実家を売却する場合には譲渡所得という区分に該当し、所得税・住民税・復興特別所得税が課されます。所得税の税率については超過累進税率(所得が多ければ多いほど税率が上がる)をイメージする方が多いかと思いますが、不動産売却の譲渡所得については分離課税が適用され税率は物件の所有期間によって定率になっています。
●5年以内(短期譲渡)…39.63%(住民税・復興特別所得税含む)
●5年以上(長期譲渡)…20.315%(住民税・復興特別所得税含む)
実家売却では、ほとんどが長期に該当すると思います。儲けの2割ぐらい税金で持って行かれると考えればよいです。
特例が適用できるか?
空き家問題が取り上げられていると冒頭書きました。国土交通省によれば空き家の7割強が旧耐震基準で建築されたものであり耐震性が不足している建築物が多い、とのこと。周辺環境への悪影響が懸念されています。
このような背景もあり税制で空き家対策に係る制度が用意されています。被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例です。内容を簡単に言えば適用要件に該当する実家を売却して儲けが3,000万円以内であれば税金が掛からない、という制度です。大きなメリットを与え空き家の売却を促しています。
先ほど2割ぐらいは税金で持って行かれると言いました。不動産売買は他の取引と比較して金額が大きい。2割が免除されれば私達の財布に与える影響も大きいです。適用できるのであれば、必ず適用したいところ。
上述の通り大きなメリットがある制度ですが、適用要件がかなり細かく規定されています。紙面の関係で制度要件1つ1つについて解説はできません。興味ある方は国税庁HPのリンクを貼ります。覗いてみてください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
特例が適用できるか?②
適用要件を自分で判断して必要となる手続きも自力(費用ゼロ)でとなるとハードルは高め。税務署や役所に何度も通える(不備があれば何度も通うことになります)、待たされてもかまわないという有り余るほどの時間がある方以外はおススメしてません。
上記リンク先を見て内容を全て理解した自分でもできる!という自信がなければ、適用できなかった時のデメリットが大きいので専門家へ一度相談しても良いかもしれません。でも概要ぐらいは…という声にお応えして下記に。くれぐれも当該記事のみで判断しないようにお願いします。
●昭和56年5月31日以前に建築されている…動かしようのない事実です。まずここを確認しましょう。
●区分所有建物登記がされている建物ではない…マンションは対象外。登記簿を確認しましょう。
●相続開始の直前に被相続人以外の人が住んでいない…一人暮らしだった、が前提です。
●相続後、誰かに貸したり事業用で使っていない…空き家、が前提です。
※嘘をついてもバレます。登記情報、住民票、公共料金の請求書など調べようと思えば調べられます。また、上記を証明するものを提出しなければなりません。
他にも建物・土地等を一緒に売却する場合に建物は耐震基準は満たしているか、老人ホームに入居していた場合はどうする?などなど論点がたくさんあります。とても書ききれません。
おわりに
最後、老人ホームの話がでたのでその話を少し。現代社会において老人ホームで最後を迎える方は増えています。そんな社会情勢なのに相続直前まで一人暮らししていなければいけないの?と言えばそうではありません。平成31年に改正が入りました。老人ホームに入居していた場合も、制度適用はできます。注意点がいくつかあります。老人ホーム入居後も空き家のままでなければなりません。勿体ないからと言って誰かに貸したり事業に使ってはいけません。また、老人ホームへの入所が要介護認定等を受けた後でなければいけません。
もう一点、実家売却の際に注意した方が良いかなと思える要件を紹介して終わります。最後の方で触れた建物の耐震基準を満たしているかという点です。こちらは(冒頭相談) 売却前であれば、まだ対応可能です。耐震基準を満たすリフォームするか、取り壊して更地で売却するかしましょう。買主需要を考えると後者になるかと思います。
残念ながら時間を巻き戻すことはできません。要件の多くは既に起きた事象で判断するもの。満たしていなければ適用対象外。上述の時点で自分は対象外と判明した方もいるかもしれません。対象外とされた皆様につきましては残念ですが、、、諦めましょう。
税務実務ではこんな場合はどうする?と判断に迷うことも多いです。微妙だなと思ったら税務署への相談は無料です。管轄税務署に相談してみてはいかがでしょうか。費用を掛けても良ければ税理士へ。
※ちなみに特例適用できて税額がゼロとなる場合でも確定申告が必要です。この質問も良く受けるのでご注意ください。
今日はここまで、また次回も宜しくお願いします!
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