これまで個人事業主さんの所得控除について、いくつか記事を書いてきました。
>https://tokunagazeirishi.com/is-there-anything-other-than-expense/
>https://tokunagazeirishi.com/should-i-get-insurance/
徳永さんおススメ教えてください!と言われることがあります。皆さん置かれている状況(所得金額、家族構成、年齢、健康状態などなど)が違います。状況把握をした上でないと回答は難しく。。。全ての方に当てはまる万能薬はありません。ただ、あえて言うなら…を記事にしてみました。ご参考まで。
将来的にお金が返ってくるものは如何でしょうか?
10万円未満(青色申告なら30万円未満)の資産を買う、仕事に関係する飲食(飲み会)をガンガン開催するなどは経費計上額が増え、税金は安くなりますが同時にお金も減ります。今後会社を成長させたいなら、毎年トントン(利益ゼロ)を目指すべきではない、必要以上の出費は控えましょう、とお客様には言ってます。ちなみに、成長を望まないならばトントンでも構いません。…が、資金繰りにはご注意ください。
では、お金が減らないで所得を減らせるなんてうまい話あるのか?という点ですが、あります。正確には一旦お金は減って(支払う)、将来返ってくる(入金される)ものです。入金時には所得計上されるので、完全なるうまい話、とは言えませんが、紹介すると下記になります。
・経営セーフティ共済(所得控除ではなく、必要経費)
・小規模企業共済
・確定拠出年金
・国民年金基金
今回は上の二つを取り上げようかと思います。
経営セーフティ共済
「取引先の倒産」という不測の事態に備えて加入するものであり、連鎖倒産を防ぐ目的で中小企業基盤整備機構(公的機関)が運営しています。このご時世で利用件数は激増しているのではないかと予測しますが、不測の事態(取引先の倒産)に直面した場合には必要となる事業資金を速やかに借り入れることができる共済制度です。積み立てた額の10倍まで借入可能。
加入すると毎月任意の金額(5,000円~200,000円)を積み立てて、将来のリスクに備えることになります。「なんだ保険の種類は違うけど生命保険と変わらないな」と思ったかもしれませんが、違います。経営セーフティ共済の場合、支払った全額が経費になります。保険料控除について冒頭でリンクを張りましたが、上限がありますし、支払った全額が控除されるわけではありません。また、所得税計算において生命保険料控除は金額的なインパクトは少なめです(最高で12万円控除)。
お金が減らない理由は、掛け捨てではないからです。積立金は40ヵ月以上加入することにより、解約時に全額返金されます。40ヵ月未満の場合も全額ではないものの返金があります。
会計処理は、所得控除ではないと書きましたが支払時に経費(損害保険料など)で処理して決算書上で売上から差し引くことになります。逆に、返金があったときは事業所得として計上します。つまり、収益を先送りする効果しかない、ということです。完全にうまい話ではないと言ったのはこの点です。税制を作る方はとても優秀です。完全にうまい話などないと思っていた方が良いかもしれません。ただし、先送りできることによって他の節税策を考える時間ができるのは非常に大きいかと。
小規模企業共済
個人事業主や会社役員の方を対象として「廃業や退職」時の生活資金を積み立てる共済制度になります。独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しています。従業員が多い(個人事業主は6人以上)と加入できませんが、起業当初などには有効ではないかと思って挙げました。小規模経営者のための退職金制度と考えてください。
経営セーフティ共済と同じく毎月任意の金額(1,000円~70,000円)を積み立てて、廃業後や退職後の生活資金に充てます。積立金の全額を所得控除でき、退職時には預金で運用するより高い利率で資金を受け取れるのでお金は減りません。掛金の上限が70,000円であり、経営セーフティ共済と比較して支払時の節税額は少なくなりますが、入金時処理は年金として受け取る場合は公的年金等と同じ雑所得、退職金として一括で受け取る場合は退職所得として所得税を計算できます。公的年金等の雑所得・退職所得はともに税金計算では優遇されており、通常の所得より少ない税金で済みます。うまい話ではないでしょうか。
ただ、デメリットは廃業や退職(引退)しないと資金を受け取れない点です。経営セーフティ共済のように40ヵ月以上経てばいつでも解約、ができません。正確に言うと解約できますが、受取金額が減ります(元本割れ)。よって解約を検討する際は、掛金減額(1,000円)して加入し続けるのか、元本割れしてでも資金を回収し他の投資に振り向けるのか、選択する必要が出てきます。これは、それぞれの判断によって対応が変わるところでしょう。
法人成り(株式会社・合同会社を設立)する場合には、廃業や退職と同じ扱いになりますので、法人成りを考えている方にとっては廃業や退職よりも柔軟に予定を立てることができるかと。
おわりに
如何でしたか?お金を減らさずに所得を減らす、といっても万能ではなかったかと思います。ただ、メリットを感じた方は是非検討してみてください。メリットを感じる方が多いものを紹介しました。経費をガンガン計上して、Cashも手元からガンガン減る、より断然おススメします。もう既に上限額まで加入している、もっと何かないの?という方はかなり事業が成功しています。もはや、法人化を検討した方が良いレベルです。節税策は法人の方が多いゆえ。
成長を望んでいないならば利益トントンで構いません、と言いました。…が、手元資金が少ない訳ですから、倒産・廃業リスクは当然高まりますよ。(コロナのような)不測の事態が起きれば大ピンチに陥ります。その点はご理解ください。いつも述べている点です。
また、会計事務所視点の話をします。成長を望まないお客様からの依頼については、売上や利益と連動して報酬が決まる事務所が多いため、仕事依頼をする際は敬遠されてしまうかもしれません。初回面談時に成長意欲がないことは言わない方が賢明です。嘘でも成長意欲満々です!IPOします!と言いましょう、笑。
会計処理・税務申告の『負担感』は売上や利益の多い・少ないだけで決まるものではありません…本質的には売上・利益に報酬連動させるのは正しくないかもしれません。ただ、『負担感』がどの程度かは受託してみないと分からず、当初聞いていた話と違った、は往々にしてあるわけで一定の基準が必要です。売上・利益プラス取引数(仕訳数)を基準にしている契約も多いです。
また、負担感とは別に、金額が大きくなればなるほど税務申告に係る『責任』が大きくなります。いろいろ試行錯誤した結果、多くの事務所で採用されている当該報酬体系(負担感と責任をベースにした体系)と言えるでしょう。弊所も同じ考えです。
税理士(業界)は真面目な人間が多いです。いわゆる「ぼったり」は極めて少なく、逆に割に合わなくても我慢してしまうことの方が多い。勤務時代、個別案件ベースで完全に赤字、をたくさん見てきました。つまり、料金については概ね支払った分のサービスは受けられると考えて頂いて良いかと。ご安心くださいませ。
本日はここまで、次回も宜しくお願いします!
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