不動産に係る仕事をしていると質問頂く機会があります。不動産業者さんが富裕層に提案しているのだと推量します。業者の立場からすればメリットの面を強調しつつ、デメリット部分についてなるべく伏せたいはず。第三者に相談するのは賢明な判断です。記事にしてみました。ご参考まで。
課税関係について
海外不動産投資を行うと投資先の国で申告・納税するのはもちろん、日本においても確定申告が必要となります。日本に居住する個人は国内外すべての所得に対して納税義務を負うからです。つまり、海外不動産投資も日本の所得税課税対象となります。
出口戦略においても同様です。海外不動産を売却する場合の譲渡所得について、投資先の国と日本で申告が必要になります。※二重課税を緩和する措置(外国税額控除)があります。
上記非常にやっかいです。現地における申告を誰がするのか?
→多くのケースで相談者さん自身が行う事はできない為、現地CPA(例えば米国公認会計士)や海外不動産投資専門でサービスを提供している日本の税理士に依頼することになります。
2回申告が必要になる事、外国語対応が必要になる事、相手国税制についての専門性が求められる事により専門家報酬は「高い」とお考え下さい。また日本語対応などしっかりした管理業者を選定する場合、維持コストについても高額です。国内投資よりメリットがあるのか判断する必要があります。
影響多大な改正が入り…
そんなこと知っている!
でも節税メリットが大きいからトータルでお得でしょ?とお考えに方に悲報…。
これまでの海外不動産投資スキームをシンプルに説明すると下記。
①富裕層が海外不動産(主にアメリカ)に投資する
②築古物件でも建物比率が高い為、多くの減価償却費計上が可能
③海外不動産投資で大きなマイナスを計上して、高税率の日本の所得(例えば給料)と相殺
④6年経過後売却し売却益について課税(20%)されて終わり※富裕層にとっては低い税率
アメリカは木造住宅築古物件でも価値は下がらない為、不動産投資としても旨味があると言えます。
ただ、みんながこれをやりだすと税制改正が入るのはいつも通りの流れでして。
当該スキームは租税回避行為の要素が強いとして、2021年に改正が入りました。海外不動産の減価償却費は原則として損益通算(所得との相殺)できなくなったのです。。。
よって、節税目的で海外不動産投資!は税制面のメリットは無くなったと言えます。不動産投資としての魅力(インカムゲイン・キャピタルゲイン)や自己満足(所有欲)を否定するものではなく【税制面】ではという話なので誤解の無きよう。
例えば「ハワイに不動産を持ちたい!」という強い思いがあるなら、購入すればいいのかと。個人の自由ですので。
おわりに
海外不動産投資について記事にしてみました。今回の相談者様は節税目的であった為、「メリットなし」と判断し辞めることになりました。節税目的でない場合の海外不動産投資に係る受託があるのかというと私の事務所ではありません。
国内投資と比較して件数は少ないと思われる為、海外不動産販売業者さんと直接連携している海外不動産投資家専門の税理士or専門部署がある税理士法人が受託しているのではないかなと思います。海外でも申告が必要となる為、現地申告と日本の申告をワンストップ対応可能な税理士の方が良いと思います。
私(徳永税理士事務所)はと言いますと、、、現地資格(米国公認会計士など)を所持していないので現地税制について詳しくはありませんし代理することもできません。順番としては現地の専門家が手続きを行ってから日本側税理士が申告手続きに入るという流れになり①時間的制約②現地申告が正しいか調査する労力(日本との違いなど)③どこまで責任を負うのかの検討(米国の分も含めて?)など諸問題あって受託していません。そのようなお客様がいましたら税理士チェンジをご提案しています。
専門性が高い仕事は報酬が高額になります。改正以前に海外不動産投資を検討していたお客様で、あまりに高い税理士報酬に節税メリットが相殺されると断念した方がいました。一般的な個人事業主確定申告料と料金体系が全く異なる点だけご留意頂ければ。10~20万円以下とか絶対にないです、笑。
今日はここまで、また次回も宜しくお願いします!
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