「徳永さん資本金いくらでスタートしたらいいでしょうか?」「そもそも何か関係あるんですかね?」という話から今回の記事に。ご参考まで。
メインの顧客はどちら?
会社法改正により現在は1円でも会社を設立できます。なので「いくらでもよくない?」となるのかなと。ただ、あなたが取引相手を決めるときのことを考えてみてください。ホームページを見て資本金1円の会社をどう思いますか?
法律の要件を満たすだけでは好ましくありません。信用力を必要とする商売であれば1円はもちろん少額すぎる資本金は避けるべきです。具体的に言えば会社相手の商売をする(B to B)、融資を受ける予定がある、ならば信用力は大事です。取引先を選択する指標の一つとして「資本金」を見ています。この点考慮にいれましょう。
一方で、個人相手の業種(例えば飲食業などB to C)は融資以外で資本金が係わることは少ない。通常「あそこ資本金が多いから食べに行ってみよう」とはならないですよね、笑。資本金の多寡は関係なし。大手チェーン店に優位性があるとすれば資本金とは別要素だと思ってます。※間接的には関係するものの、直接的な影響は少ないという意味で。
また、アルバイトさんを雇う時に資本金が関係しませんか?と聞かれることもあります。創業時あまり影響ないです。バイトしようとしている人にとって資本金1000万円も3000万円も大差ない、どっちでもいい、資本金なんて見てない、かなと<主観>。
何十億、何千億となってくれば話は変わるかもしれません。ただそれだって皆さん、ソフトバンクが資本金いくらか知ってますか?知らない人の方が圧倒的多数です。彼らにとっては立地や時給と社内雰囲気の方がよっぽど大事ではないでしょうか。
会社が順調に成長し正社員雇用を考えるようになると資本金の重要性が増してきます。就活・転職にあたり会社概要で資本金・従業員数・売上推移・同業他社チェックは多くの人がしています。 人生を左右する一大イベント。慎重になって当たり前ですね。
B to Cであっても正社員採用する段階へ来たら資本金は気にすべき事項と言えそうです。
そもそも事業するのにいくら必要?
どんな事業であっても初めるには資金が必要です。それはどこから捻出されるのでしょう?
自分で用意する、他人に出資してもらう、創業融資をうける、考えられるのはこの辺です。自分又は他人からの出資が資本金で創業融資が借入金(負債)です。前者は返済義務はなく、後者は返済義務があります。
どちらでも構いませんが事業活動に必要な資金を用意する必要があり、仮に1円も融資が受けられないとしたら資本金で用意するしかありません(役員借入でもOK)。事業に必要な額を見積り、融資を検討した上で資本金をいくらにするか考えましょう。
親族でない限り設立時に他人から出資を受けるのは難しいと思います。また、先日あった「レペゼン地球解散」の問題と同様に他人から出資を受けるのはリスクを伴います。会社を支配されてしまう可能性があっておススメできません。
創業時に強い信頼関係があってもそれが未来永劫続くとは限りません。創業時は支配権(議決権)を社長自らが持つようにしましょう。少なくとも51%以上は。もちろん理想を言えば100%です。
税金面から見ると
上記ブロックを参考にしながら税金面でもっともメリットを受けられるのが1000万円未満で設定する事です。ご存知の方も多いでしょう。消費税の免税を受ける為ですね。現行税率では売上の10%を消費税として顧客から預かっています。
預かった消費税は自分のものではありません。文字通り「預かっている」だけです。預かったものから自分が支払った消費税を差し引き、税務署に申告納付する必要が「本来」あります。しかし、小規模な事業者(資本金1000万円未満)は最大2年間この義務を免除しますよ、という規定になっています。
※3年目以降も基準期間の課税売上が1000万円以下であれば免除されます。
例えば文房具屋さんで2000万円売上があったら①200万円の消費税を預かります。仕入など諸々の諸費用が1000万掛かったとすれば②支払った消費税は100万円です。①‐②=100万円を申告納付するのが原則です。よって、この状況が続くと仮定すれば200万円の納税が免除されることになります。大きいですよね。①-②の金額が大きければ大きいほど免税によるメリットは大きくなります。
※考え方を知って頂きたいだけなので非・不課税取引や簡易課税の話は省略しています。
住民税均等割についても資本金1000万円超は18万円になるので11万円UPします(7万円→18万円)。こちらは当初2年間だけでなくずっと影響が続きます。 一般的な業種であれば創業時は少なすぎず、1000万円以上にならない範囲で検討していくというのが基本かなと思います。 ご参考まで。
おわりに
若い世代を中心に目に見える豪華さを求める傾向は少なくなってきました。見栄(他人からの評価)の為に実利を失うのはバカバカしい、ということでしょう。とても賢明です。資本金も同じで見栄の為だけに大きな金額(1000万円以上)を設定するのはやめましょう。一般論として就活・転職などで資本金が影響してくると書いたものの、これは一般論であって真にその会社が「優れている」かは分かりません。
「ウチは資本金●●円だ!」は「ウチは年商(売上)●●円だ!」と同じぐらいあてにならないのです。参考程度に見るべきであり会社実態のすべてを把握できるわけではありません。経営者の評価は元手のキャッシュをいかに効率よく増やせるかで決まります。取引先や融資などを検討した結果、でない限り無駄なコストを掛けず本業に充ててください。
昨今の経済環境を受けてか資本金を減らす大企業が増えています。かっぱ寿司、はなの舞、スカイマーク、毎日新聞、グリー、JTBなど令和2年だけで約1千社の大企業(資本金1億円超)が中小企業へと変貌しました。現行税制上減資をすれば税金が安くなるからです。
世間の反応は批判的なものが多いですね。…がこれは想定内でありイメージダウンよりも節税効果の方が大きいという経営判断でしょう。スケール感は異なりますが1000万円未満であるか否かでも納税額が変わります。中小企業は世間や株主からの批判は考えなくてもよい(株主=経営者)。 銀行や取引先以外で御社の資本金を気にする人はいません。この点に問題がなければ税金面のメリットはしっかり享受してきましょう。
※ちなみに金融機関も資本金だけを見ているわけではありませんよ。『稼ぐ力』(ビジネスモデル)こそが最も重要です。
減資する大企業が増えてくれば資本金の額で優遇措置適用を判定する制度には今後改正が入るかもしれません。税制改正は常にチェックしましょう。改正があればもちろん私も発信します。もし改正されたとしても従業員数・給料総額・オフィス面積などが判定の要素になるかな~と考えています。実質的には大企業であるにもかかわらず中小企業の優遇措置を適用することを防止する為なので。
よって、真面目に中小企業として頑張っておられる経営者さんが損をするような改正にはなりませんから安心してください。今日はここまで。また、次回もよろしくお願いします!
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