2022年になりましたね。我々の業界で言うところ2022年問題は「生産緑地」の問題です。500㎡以上の農地を所有している場合に関係してきます。広く一般的に関心があるような話ではありませんが、税理士のブログを見るような方には関係するかもしれません。記事にしてみました。ご参考まで。
生産緑地制度とは
まずは生産緑地制度の説明から。なるべく法律用語を使わずに言うと市街地にある500㎡以上の農地に対して建築行為などの許可を規制し農地の保全を図る制度です。公害や災害の防止に役立ち、良好な都市環境にも寄与します。
えっ地主に何のメリットがあるの?と思っている方も多いはず。税金面のメリットがあります。固定資産税・相続税にて優遇措置あり。どちらも農地として評価する為、宅地評価と比較するとかなり低い評価額ですみます。
つまり固定資産税や相続税が安くなる。500㎡以上の土地が宅地並みに評価されるか、農地として評価されるかは税額に大きな影響を与えます。よって、市街地に500㎡以上の農地を持っている地主さんの多くが生産緑地指定を受けているのです。
※農業の継続意思が必要な為、継続できない場合は対象外です。例えば遠方に実家の農地があり自身は東京で就職した為、農業は続けないなど。
何が問題なのか?
1992年当時、政府はもっと宅地を市場に供給しようと農地への固定資産税を強化しました。
※農地所有者に対して売却を促そうという意図で。
ただし、生産緑地に指定されれば固定資産税の強化対象から外れることができました。生産緑地制度が30年間宅地並みの評価を猶予するとなっているからです。1992年から30年後が今年(2022年)。地主が生産緑地の指定を解除して宅地として売却するのではないか?となっているのです。
売却する地主さんが多く現れれば大量の用地が市場に供給されます。結果、地価が下落すると懸念されているのです。これが2022年問題です。国土交通省の資料によれば2022年期間満了する生産緑地は全生産緑地の約80%(9700ha)だそうです。
これら全て市場に供給されたら確かに地価は下がるかもしれませんね。
特定生産緑地制度が創設されました
30年経過した生産緑地の地主は市区町村に買取りの申し出ができます。仮に市区町村が買い取った場合は公園など公共施設として整備されるでしょう。ただ、ご存知の通りどこの行政機関も財政的な余裕はありません。よって、2017年に法律ができました(改正土地緑地法)。
30年経過した生産緑地に10年ごとの延長を認めるという内容。いわゆる「特定生産緑地制度」です。大地主で相続税申告において納税の猶予を代々希望しているようなケースでは引き続き農業を続けこの制度を利用することが予想されています。
結果、上記9700haが一度にドッと市場に供給される事はないだろうと私は考えます。…が、未来のことは誰にも分かりません。不動産市況を見て今が売り時だと地主さんが判断すれば大量に出てくるかもしれません。
こればかりは株式投資と同様に不動産売買も最新情報を手に入れ自己責任で判断するしかありません。他人の意見を妄信するのは危険です。
おわりに
2022年問題の根本が何かお分かり頂けたでしょうか?元生産緑地が市場に大量供給されるかもしれない。すると土地価格が下がるという問題でした。どうでしょう?問題ありますか?これは既に土地を持っている人たち目線の話です。逆にこれから不動産購入を考える人にとっては歓迎すべき事態。安く不動産を手に入れられるチャンスだからです。
今回問題となっているのは不動産会社や大地主さんが既に持っている土地への影響(賃料収入なども含む)を懸念しているという点。ただし、不動産会社・大地主さんが今後一切不動産購入しないわけではなく、むしろ良い物件があれば今後も購入する可能性が高い。よって、まずはご自身がどの立ち位置にいるのかを確認する必要があります。
いつも通り私はどうなのか?という話を。私は既に土地購入している、今後購入する予定なしです。近隣に大量の土地が供給されると私が所有する土地の時価が下落します。地図を見る限りでは500㎡以上(条例によっては300㎡)の農地は周りにないので影響は少ないか?…というより空き地が学校の校庭と公園以外全くない。
上述では特定生産緑地制度ができたと書きました。更に追加で2018年には都市農地貸借法も創設しています。自分で農業を継続しなくても農地を(農地として)貸すことで猶予を受けられるようになりました。これらを併せて考えると、もっと範囲を広げた先に農地があったとしても影響は弱と予想。楽観的ですかね、笑。
川口駅周辺でこの状況です。都心部駅周辺の土地も同じような状況ではないかと。ご自身の住まい周辺をGoogleマップ(航空写真)で確かめてみてください。大きな空き地があれば農地の可能性あり。
不動産価格に対する影響については各メディアでも度々取り上げられる①人口減少や②テレワーク普及による影響の方が大きいんじゃないでしょうか、というのが私なりの結論。皆様はどう考えますか?
それぞれの状況によって問題の捉え方が変わります。この記事をきっかけに考える機会になったなら幸いです。今日はここまで、また次回も宜しくお願いします!
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